婚活をしていると、
「この人でいいのか」という問いが、
ある日、静かに心に浮かぶ。
お見合いから数回のデートを経て、
誠実に向き合ってくれる相手が現れた。
相談所では「そろそろ真剣交際を」と言われる。
相手に不満があるわけではない。
むしろ、優しくて穏やかで、条件的にも申し分ない。
でも――どこか、心が揺れる。
「好きかどうかわからない」
「このまま進んでいいのかな」
「もっと合う人がいるかもしれない」
そんな迷いが生まれるとき、
自分が何を怖がっているのか、
誰も教えてくれない。
婚活で“迷う”ことを、
「優柔不断」や「気持ちが足りない」と感じる人は多い。
でも、実はその迷いは、心が真剣になっている証だ。
お見合い初期の頃は、
「どう思われるか」「次に繋がるか」に意識が向く。
けれど、真剣交際を考える段階になると、
自分の人生と相手の人生が重なり始める。
つまり、迷いとは、
“恋愛”から“現実のパートナーシップ”へと
心が移行する瞬間に現れる自然な反応なのだ。
「真剣交際に入るべきか迷う」というのは、
「相手が悪い」からではない。
むしろ、自分が“ちゃんと選びたい”と思っているからこその葛藤だ。
婚活初期のドキドキは、
“誰かに選ばれたい”という気持ち。
でも、真剣交際前の迷いは、
“自分が選ぶ責任”を意識し始めた証拠。
だから、迷うのはむしろ正しい。
焦って“正解”を出そうとしなくていい。
ある女性が、こう話してくれた。
「彼は優しいし、誠実です。
でも、話していてもトキメキがないんです。
このまま進んでいいのか、ずっと迷ってます。」
彼女は30代後半、婚活歴3年。
過去に何人かと仮交際を経て、
ようやく安定した相手に出会えた。
でも、「安心」と「愛情」が結びつかない。
そのズレに、心が静かにざわついていた。
私は彼女にこう伝えた。
「“トキメキがない”というのは、
“心が落ち着いている”とも言えます。
ただ、そこに“心地よさ”があるかどうかが大切です。」
彼女は少し考えて、
「確かに、会っていると落ち着くんです。
でも、“これでいいのかな”って自信が持てないんです。」
そう、
婚活で迷うときに苦しいのは、
「相手のこと」ではなく、
「自分の気持ちが見えない」ことなのだ。
真剣交際の迷いをほどく鍵は、
「好きかどうか」ではなく、
“一緒にいるときの自分が好きかどうか”にある。
婚活中の多くの女性は、
“条件”や“好かれるかどうか”に意識が向く。
けれど、幸せな結婚生活を続けている人の多くが、
「彼と一緒にいると、自分が自然でいられる」と語る。
恋愛の熱よりも、
“心がやわらかくなる相手”が、
人生のパートナーには向いている。
迷ったときは、
「この人といるときの私は、どんな表情をしているだろう?」
と考えてみるといい。
その答えの中に、
あなたの心がすでに選んでいる方向が見えてくる。
一方で、迷いが長く続くときには、
“焦り”が心を濁らせていることもある。
「このチャンスを逃したら、もう出会えないかも」
「婚活を続けるのは疲れた」
そんな思考が、冷静な判断を奪ってしまう。
焦りの声は、いつも“今の幸せ”ではなく、
“未来の不安”を基準にしている。
けれど、結婚は“安心の積み重ね”でしか続かない。
「不安だから選ぶ」のではなく、
「穏やかでいられるから選ぶ」。
それが、
“本当に自分を幸せにする決断”だ。
ある女性は、真剣交際に入る直前、
「決められない自分が嫌になった」と言っていた。
でも、数か月後、
彼女はその男性と結婚した。
「当時は迷ってばかりだったけど、
あのとき焦って決めなくてよかった。
時間をかけて見たことで、
“信頼できる人”だと確信できたんです。」
迷った時間は、無駄ではなかった。
それは、心が安心を確認するための時間だったのだ。
婚活の世界では、
「決断力がある人がうまくいく」と言われがちだ。
けれど、本当の決断力とは、
“焦らずに迷える勇気”を持つことだと思う。
迷いながらも、誠実に相手と向き合う。
不安を感じながらも、
「自分は何を大切にしたいのか」を見失わない。
それこそが、
真剣交際に進むために必要な“心の成熟”だ。
焦らなくていい。
迷うことは、悪いことではない。
あなたが今感じているその迷いは、
“誰かに愛されたい”ではなく、
“誰かを本気で愛したい”と思っている証拠だ。
そして、
その迷いの先で見つけた「静かな安心」は、
恋のドキドキよりも、
ずっと長くあなたを支えてくれる。
婚活のゴールは、
“迷わない相手”を探すことではなく、
“迷っても一緒にいられる人”を見つけること。
そのことに気づいたとき、
真剣交際の意味が、少しだけ優しく見えてくる。