婚活をしているのに、
ふと、元彼のことを思い出してしまう。

プロフィールを作りながら、
デートの待ち合わせをしながら、
「前の彼だったら、こう言ってくれたな」と心がつぶやく。

そんなとき、
「まだ忘れられてないのかな」
「前に進めてないのかな」と自分を責めてしまう。

けれど、その“記憶の痛み”は、
決して弱さではない。
それは、かつての自分が、本気で人を愛した証でもある。


婚活中に復縁を考えてしまう人は、意外と多い。
それは、「過去に執着している」わけではなく、
“今の出会いが心に響いていない”というサインでもある。

新しい相手と会話をしていても、
どこか上滑りするような感覚。
相手は悪くないのに、心がピクリとも動かない。

そんなとき、過去の恋の温もりがふっと蘇る。
「前の人と話していたときは、自然だった」
「もう一度やり直せたら…」

――そう思うのは、
“元彼が特別だから”ではなく、
“今の自分が少し疲れているから”かもしれない。


婚活は、希望の活動であると同時に、
“比較の連続”でもある。

プロフィールの中で比較し、
LINEの返事で比較し、
デートの会話で比較し…。

そして気づかぬうちに、
“心で人を見る力”が少しずつ鈍っていく。

そんなとき、
「元彼」という存在は、
“比較のない安心”として心に浮かぶ。

過去の彼との関係には、
もう駆け引きも、探り合いもない。
思い出の中では、
すべてが“分かり合えていた”ように見える。

でも、それは、記憶が美化した優しさ
実際の関係は、
「別れる」と決断したその瞬間に、何かが噛み合わなくなっていたはずだ。


ある女性が言っていた。

「婚活で何人と会ってもピンとこなくて…。
気づいたら、昔の彼のSNSを見てました。
結婚したわけじゃないのを知って、少し期待してしまったんです。」

彼女は、その後、勇気を出して連絡を取った。
けれど、話してみると、昔と同じ違和感を感じたという。

「懐かしい気持ちはあったけど、
もうあの頃の私じゃなかったんです。」

――そう。
復縁を考えるとき、
本当に求めているのは“彼”ではなく、
“彼といた頃の自分”なのだ。

あの頃は、素直に笑えて、
未来を信じていられた。
そんな自分に、もう一度会いたくて、
“復縁したい”という気持ちが湧き上がる。


でも、本当に復縁がダメというわけではない。

過去と未来をつなぐように、
もう一度出会い直せる関係もある。
ただし、それは「やり直す」のではなく、
“新しい関係を築く覚悟”を持てるかどうかにかかっている。

「昔の彼に戻りたい」ではなく、
「今の私としてもう一度向き合いたい」――
その姿勢でなければ、
たとえ再会しても、同じ痛みを繰り返すだけだ。

復縁を選ぶとき、
大切なのは“思い出”ではなく“今の心”。
そこに、自分自身の成長があるかどうか。


婚活中に復縁を考えることは、
実は、“心の棚卸し”でもある。

「私は、どんな人となら幸せになれるのか」
「何を大切にしたいのか」

それをもう一度見直すために、
過去の恋がそっと顔を出す。

つまり、“復縁したい”という感情そのものが、
“本当の自分に戻るためのプロセス”なのだ。

だから、自分を責める必要はない。
過去を思い出すのは、未練ではなく、
“心が整理を始めている証拠”だから。


婚活を続けていると、
「前の人と比べてしまう自分が嫌になる」と言う人もいる。

でも、“比較”は、悪いことではない。
それは、自分の感性を取り戻している証。

昔の恋と比べて、
「違う」と感じること。
それは、「私はこういう愛が欲しい」と気づく瞬間でもある。

婚活は、
誰かを探す旅ではなく、
“自分を取り戻す旅”なのだ。

復縁という言葉に揺れながらも、
あなたが心の底で求めているのは、
“あの人”ではなく、“自分を信じられたあの頃の自分”。

その自分を取り戻したとき、
新しい恋も、過去の恋も、
ようやく同じ場所に並んで見える。


焦らなくていい。
復縁を考える自分を、否定しないで。
それは、過去を手放せない弱さではなく、
“愛をもう一度信じたい”という強さだ。

大切なのは、過去に戻ることではなく、
過去を抱きしめたまま前に進むこと。

誰かを想い続けた時間は、
あなたの中に確かな温もりとして残っている。

その温もりを、次の恋にそっと渡せたとき、
ようやく“本当の意味での前進”になる。

婚活も、復縁も、
行き先は違って見えて、実は同じ。
どちらも“自分を大切にすること”から始まる。