婚活イベントやマッチングアプリで、プロフィールカードを埋めるとき。
「性格」の欄にペンを止めたまま、何分も考え込んでしまう。
「明るい」「社交的」「優しい」「マイペース」。
どれも嘘ではない。けれど、どれも“これだけ”ではない気がする。
周りを見渡せば、似たような言葉が並んでいる。
どれも正しく、どれも無難。
けれど、どの言葉も、あなたの呼吸の仕方までは伝えてくれない。
プロフィールカードの「性格欄」ほど、人が自分を“正しく小さくまとめよう”とする場所はないのかもしれない。
まるで履歴書の志望動機のように、「相手にとって良さそうな私」を整える。
それは誠実な努力でもあるし、同時に少しだけ悲しいことでもある。
本当は、人の性格なんて、瞬間ごとに違う。
静かな場所では優しいのに、混み合った電車では少し不機嫌になる。
人の話を聞くのが好きだけど、たまに誰にも会いたくなくなる。
笑っている時間もあれば、泣きたい夜もある。
その全部を含めての「あなた」なのに、
カードの小さな枠の中では、“一言でまとめられる私”を探してしまう。
でも、どうしてそんなに「良い印象」を残そうとするのだろう。
もしかしたら、私たちは“選ばれるための言葉”に慣れすぎてしまったのかもしれない。
学校の自己紹介、面接、SNSのプロフィール。
いつも「どう見られるか」を先に考えて、自分の“感じていること”を後回しにしてきた。
けれど、婚活というのは、「どう見られたいか」ではなく、「どう生きたいか」を問われる場所だ。
相手が求める理想の誰かではなく、
一緒にいて“自分でいられるかどうか”が、未来を決めていく。
だからこそ、プロフィールカードの性格欄に書くべきなのは、「いい人」ではなく、「本当の自分」なのかもしれない。
たとえば、「人見知りだけど、慣れた人にはよく笑います」。
「頑固なところもあるけど、好きになった人のことはとことん大事にします」。
「一人の時間が好き。でも一緒に過ごす時間をもっと好きになりたい」。
そんなふうに書けたら、どこか空気がやわらかくなる。
完璧ではない自分を見せた瞬間、相手も“本音”で近づける。
人と人が惹かれ合うのは、整えた言葉よりも、ふとした“素の一言”だったりするから。
本当の魅力というのは、正確な説明よりも、感じられる温度に宿る。
「この人と話したら、なんだか落ち着くな」
「この人の言葉には嘘がないな」
そんな印象は、肩書きや性格欄の言葉を超えて伝わる。
婚活の場では「自己PRが苦手です」と悩む人が多いけれど、
それは不器用なのではなく、自分を“商品”として見せたくない優しさの証でもある。
あなたが誰かを心から大切にしたいように、
誰かもまた、あなたの「整えない部分」を知りたがっている。
「優しいです」と書く代わりに、
「人の気持ちを察しすぎて疲れることがあります」と書いてもいい。
それを読んで、「あ、わかる」と思う人が現れたなら、
その人こそ、あなたと同じ“温度”を持つ人だ。
婚活で出会うのは、“条件の合う相手”ではなく、“呼吸の合う相手”だ。
だから、性格欄は、飾る場所ではなく、
「あなたの呼吸」を伝える場所にしていい。
何も完璧に言葉を選ばなくてもいい。
“あなたらしい文のリズム”で書けば、それが一番の自己紹介になる。
たとえば、「よく笑うけど、傷つきやすいです」。
それだけで、どこか人間らしく、温かい。
もしも「上手く書けない」と感じる夜があっても、大丈夫。
“表現できない”のではなく、“大切に選んでいる”だけだから。
その慎重さが、あなたの誠実さを物語っている。
プロフィールカードの性格欄は、未来を決める欄ではない。
むしろ、「いまの自分」を静かに見つめ直す小さな鏡だ。
そして、その鏡に映る姿を好きになれたとき、
あなたの言葉は、誰かの心にまっすぐ届く。
「誰かに選ばれる私」ではなく、
「私が心から“これでいい”と思える私」であれば、
出会いはきっと、違う形で訪れる。
だから、今日カードを埋めるときは、少しだけ深呼吸してみよう。
「どう見られるか」よりも、「どう感じて生きていたいか」を想いながら。
小さな欄の中に書くのは、ただの言葉ではなく、
“あなたのやさしい呼吸”そのものだから。