「婚活って、やっぱり実家暮らしは不利ですか?」
そう尋ねられることがある。

たしかに、婚活の場ではよく言われる。
“実家暮らしの女性は自立していない”とか、
“生活力がなさそう”とか。

プロフィール欄に「実家暮らし」と書くことに
少し引け目を感じている人も多い。

でも、果たしてそれは本当だろうか?


たしかに、
「ひとり暮らし=自立している」という印象を持つ人は多い。

自炊も、掃除も、家計管理も。
一人で生活している姿は、
“ちゃんとした大人”という安心感を与える。

その一方で、「実家暮らし」という言葉には、
どうしても“親に依存している”というイメージがつきまとう。

しかし、実際に話を聞いてみると、
実家暮らしにはそれぞれの理由と事情がある。

親の介護、金銭的な事情、仕事の場所。
あるいは単に、家族のつながりを大切にしている人もいる。

つまり、“実家暮らし”という事実そのものよりも、
“どう生きているか”のほうがずっと大切なのだ。


婚活で「実家暮らし」が不利に見えるのは、
相手が“あなたの生活の全体像”を想像できないから。

一人暮らしの人なら、
自炊もして、部屋も整えて、
日常生活を自分で回していることが明らかだ。

でも、実家暮らしの人は、
生活の一部を親が担っている場合もある。
相手から見れば、
“家庭を築く準備が整っていないのでは?”と感じてしまうことがある。

つまり、“不利”なのではなく、
“伝わりづらい”だけなのだ。


では、どうすればいいのか。

それは、「自分の生活力」を“言葉で伝えること”。

たとえば、
「今は実家にいますが、家事や買い物は自分で担当しています」
「両親のサポートをしながら働いています」
「結婚後は自立した生活を想定しています」

このように具体的に話すことで、
相手の中にあった“実家暮らし=依存”という誤解は消えていく。

婚活では、“状況”よりも“姿勢”が伝わる。
大切なのは、
「私はどう生きているか」をきちんと語れること。


ある女性の話を思い出す。

彼女は30代半ば、都内で働く事務職。
5年前に母親が体調を崩し、
介護を手伝うために実家に戻った。

「実家暮らしだから、やっぱり婚活では不利ですよね」
そう言いながらも、
母親を大切に思う気持ちが滲んでいた。

彼女は、婚活プロフィールにも正直に書いた。
「母と暮らしています。家事は分担しています。
 母のことは大切にしていますが、結婚後はお互いの生活を尊重できる関係を築きたいです。」

その文章を読んで申し込みをしてきた男性は、
同じく家族思いで、誠実な人だった。

「あなたが家族を大切にしている姿に惹かれました」
彼はそう言ったという。

彼女は言う。
「“不利”だと思っていたことが、
 私の“信頼できる一面”として伝わることもあるんだなと思いました」


実家暮らしが婚活で不利に見えるのは、
「自立しているように見えない」という印象のせい。
でも、“自立”とは、
ひとりで暮らすことではなく、
“自分の選択に責任を持つこと”だ。

親と暮らしていても、
自分の時間を大切にしている人は、
心の意味で自立している。

逆に、一人暮らしでも、
生活が乱れていたり、
孤独や不安を埋めるために誰かを求めるような状態なら、
それはまだ“依存”の中にいる。

つまり、“実家暮らしだから不利”なのではなく、
“自分の軸がどこにあるか”が問われているのだ。


婚活において、
「どんな環境で暮らしているか」よりも、
「その環境で何を学んできたか」が大切だ。

実家暮らしであれば、
家族との関係性を通じて、
“人と暮らす力”を自然に身につけている人も多い。

たとえば、
親の生活リズムを尊重すること。
誰かが体調を崩したときに支え合うこと。
自分のスペースを保ちながら、
他人の領域も尊重すること。

それらは、結婚生活において何よりも大切な力だ。

実家暮らしは、
“人と暮らす練習”をしてきた環境でもある。

そう考えると、
婚活で“不利”どころか、
むしろ“家庭を築く準備が整っている”とも言える。


ただ、注意したいのは、
“家の中に閉じこもってしまうこと”。

実家暮らしの人が陥りがちなのは、
生活が便利で快適なぶん、
「新しい出会い」への行動が後回しになってしまうことだ。

家に帰れば温かいご飯があり、
自分の部屋で安心して過ごせる。
それはとても幸せなことだけれど、
「心地よさ」と「前進」はときに相反する。

だからこそ、
外に出る時間を“意識して作ること”が大切。

行動することが、
“自立した意思”を形にする唯一の方法だから。


婚活において、
“実家暮らし”という言葉の印象を変えるのは、
「説明」ではなく「姿勢」だ。

あなたがどう生きているか、
何を大切にしているか。
それを言葉にし、行動で示すこと。

それが、
“環境”を“魅力”に変える力になる。


婚活で実家暮らしを“不利”だと感じる必要はない。
むしろ、その環境の中で
自分がどう生きてきたかを語れる人は、強い。

「私は、家族との時間を大切にしながら、
 これからは自分の家庭を築いていきたい」

そう語るあなたの言葉は、
きっと誰かの心にまっすぐ届く。


実家暮らしは、欠点ではない。
それは、あなたの“生き方のひとつ”。

そして、本当の意味での“自立”とは、
どこに住むかではなく、
どう生きたいかを自分で選び取ること。

婚活の舞台で問われているのは、
“住まい”ではなく、“心の姿勢”なのだ。

焦らなくていい。
比べなくていい。

あなたが選んできた環境の中には、
ちゃんと、愛を育てる準備ができている。