「彼氏がいるのに、婚活のサイトを見てしまうんです。」
そう打ち明けてくれた女性の言葉は、
どこか自分を責めるような響きを帯びていた。

恋人がいるのに、他の人との出会いを探してしまう。
そんな自分を「最低だ」と思う人は少なくない。
でも、その気持ちの奥には、
“誰かを裏切っている”のではなく、“自分の心が置き去りになっている”というサインが隠れている。


「彼氏がいるのに婚活を考える」という状況には、
大きく分けて二つのパターンがある。

ひとつは、「結婚の話が進まない関係に、不安を感じている」場合。
もうひとつは、「恋愛としては好きだけど、この人と結婚するイメージが持てない」場合だ。

どちらも、“相手への不満”ではなく、
“将来に対する不安”が根っこにある。

つまり、それは「彼への気持ちが冷めた」わけではなく、
「この関係に“終わり”が見えないことへの焦り」なのだ。


30代を過ぎると、恋愛の形は少しずつ変わる。
“ときめき”よりも“安心感”を求めるようになり、
“好き”よりも“続けられるか”を考えるようになる。

そして、恋人との関係に“未来の輪郭”が見えないとき、
心は自然と別の方向に目を向けてしまう。

それが“婚活サイトを開いてしまう”という行動として現れる。

罪悪感があるからこそ、
「こんなことしちゃダメ」と思う。
けれど、それは浮気心ではない。
それは、“自分の人生を見失いたくない”という本能の叫びなのだ。


ある女性がこんなことを話してくれた。

「彼とはもう3年付き合ってます。
でも、結婚の話を出すといつも“まだ早いよ”って言われる。
気づけば、私は30代後半。
このまま彼といていいのか、分からなくなりました。」

彼女は、彼を責めているわけではなかった。
ただ、自分の未来を信じられなくなっていた。

「彼を信じる」と「自分の未来を信じる」は、
似ているようで、実は違う。

人を愛することと、
自分の人生に責任を持つこと。
その二つが交差するとき、
人は“婚活”という現実的な選択肢を思い出すのだ。


婚活を考えることは、裏切りではない。
それは、“自分の心の声をもう一度聞き直す行為”だ。

「彼が好き」
「でも不安」
その両方が本音であっていい。

愛しているからこそ、未来が気になる。
未来を大切にしたいからこそ、今を見直したくなる。

その矛盾は、あなたが“本気で愛を信じている”証でもある。


ただし、ここで大切なのは、
“今の彼とどう向き合うか”を避けないこと。

婚活を考えるほどの不安を抱えているなら、
それは“沈黙してはいけないサイン”だ。

「結婚について、どう考えてる?」
この一言を聞く勇気を持つことが、
婚活を始めるよりもずっと大事な一歩になる。

その答えがどうであれ、
あなたの心が“現実”と向き合った瞬間、
未来は静かに動き出す。


婚活と恋愛の大きな違いは、
“結果を求めるタイミング”だ。

恋愛は、感情の流れに身を任せるもの。
婚活は、時間を意識して選び取るもの。

だから、恋人がいるのに婚活を考えるとき、
その間に“温度差”が生まれるのは自然なことだ。

そして、その温度差を感じ取れるのは、
あなたが人生を真剣に見つめている証拠だ。


ある女性は、
「彼氏がいるのに婚活をするなんて、最低だと思ってました」と話してくれた。
けれど、数ヶ月後にこう言った。

「婚活をしたおかげで、“私が本当に欲しかったのは愛情じゃなく安心感だった”って気づいたんです。」

彼女は結局、婚活で新しい人と出会った。
でも、それは“彼を否定した”のではなく、
“自分の幸せの形を選び直した”だけだった。

人を変えることはできない。
けれど、自分の生き方を選び直すことはできる。


彼氏がいるのに婚活を考えてしまう――
それは、裏切りではない。
“自分の心を見失いたくない”という祈りのような行動だ。

恋人との関係を見直すことも、
新しい出会いを探すことも、
どちらも「幸せになりたい」という根は同じ。

だから、自分を責める必要はない。

大切なのは、
“彼とどうなるか”ではなく、
“自分がどう生きたいか”。

その問いを避けずに見つめられたとき、
あなたの中で“恋愛”は“人生の選択”へと変わる。


焦らなくていい。
心が迷うのは、あなたが誠実だからだ。
彼を傷つけたくない気持ちも、
自分の未来を諦めたくない気持ちも、
どちらも“本物”の愛情。

婚活を考えるその瞬間、
あなたは決して弱い人ではない。
むしろ、
“幸せを他人任せにしない強さ”を持った人だ。

今はまだ、
心の中で整理がつかないかもしれない。
けれど、いつか必ず、
「私が選んだ道でよかった」と静かに思える日がくる。

それが、
彼と共に歩む未来でも、
新しい出会いの先でも――
どちらでも、きっと大丈夫。