婚活をしていると、「同時進行ってどうなんだろう」と考える瞬間がある。
仮交際だからまだ正式な関係ではない――そう分かっていても、
二人以上の人と会っていると、どこか落ち着かない。
「私は器用に恋愛できないタイプだから」と自分を責めたり、
「一人に絞れないのは失礼じゃないか」と心がざわついたり。

でもね、まず伝えたいのは、
同時進行は“誠実さの欠如”ではなく、“誠実さを見極めるための過程”だということ。


婚活は、感情だけでは進められない。
「好き」より先に、「合うかどうか」を探す時間がある。
その中で、いくつかの出会いを同時に見ていくのは、
むしろ現実的で、健全な選択だ。

同時進行をしていると、比較しているような気持ちになるかもしれない。
でも実際は、“比較”というより“確認”なんだ。
どんな人といると自分が落ち着くか、
どんな会話のテンポが自然か、
どんな沈黙が心地いいか。

それを感じ取るには、一つの出会いだけでは分からない。
いろんな関係の中で、初めて“自分の感情の輪郭”が見えてくる。


ただ、同時進行の本当の難しさは、
複数の相手をどう扱うかではなく、
自分の心をどう整えるかにある。

人に会うたびに、少しずつエネルギーを使う。
複数の人とやり取りをしていると、
気づかぬうちに心が薄く広がってしまうことがある。

LINEの返事をしていても、誰に何を言ったか分からなくなる。
相手の言葉にちゃんと反応できないまま、
なんとなく「いい人だった」で終わってしまう。

それが続くと、どんなに出会っても“心が動かない”状態になる。
恋愛が「作業」になってしまうんだ。

だから、同時進行をするなら、
「出会いの数」より「一つの出会いに込める密度」を意識すること。


大切なのは、「同時に会っていること」をどう自分の中で扱うか。
たとえば、3人と会っていたとしても、
「誰が一番いいか」ではなく、
「誰といると自分が素直でいられるか」に注目する。

一緒にいるときの笑い方、沈黙のときの気持ち、別れ際の空気。
それを丁寧に感じていけば、
自然と一人の顔が浮かんでくる瞬間がある。

それが、「次に進む」合図。


婚活の“同時進行”って、恋愛の世界では特別に見えるけど、
人生の中ではよくあることだと思う。
仕事を選ぶときも、いくつかの選択肢を見比べる。
家を探すときも、複数の候補を見てから決める。
それを「迷い」とは呼ばない。
むしろ、“自分にとっての本当の心地よさ”を探す行為だ。

だから、婚活における同時進行も、
本質的には“自分を知るためのプロセス”なんだと思う。

同時進行とは、人を見極めることではなく、自分を知る行為。
それを忘れなければ、迷っても必ず辿り着ける。


そして、どの人にも誠実でいたいなら、
「全部を完璧にやろう」と思わないことだ。

全員に同じテンションで連絡を返す必要はない。
本音で話せる人に、少しだけ時間をかければいい。
そして、「もう会う理由が薄くなった」と感じた相手には、
静かに区切りをつけよう。

誠実さとは、すべての人に優しくすることではなく、 必要のない期待を持たせないこと。


婚活では、「どっちも悪くないけど決められない」という状況もある。
けれど、それは“相手の問題”ではなく、“自分の中の準備不足”のサイン。
どちらを選ぶかではなく、
「自分が誰と向き合う覚悟を持てるか」を問われている。

恋愛は、選択よりも決断の連続。
そして決断は、相手を選ぶことではなく、
自分の未来の形を選ぶことだ。


同時進行の終わり方にも、その人の“人間性”が出る。
きちんと伝えて終わらせる人は、
その一言で相手に尊敬を残す。

たとえ短い関係でも、
最後の言葉が誠実なら、あなたの印象はずっと温かく残る。

婚活の成功は、出会いの数ではなく、 出会いをどう終わらせたかで決まる。


同時進行に罪悪感を抱く必要はない。
ただ、「同時進行している自分」をきちんと自覚して、
相手に対しても、自分に対しても、
曖昧さを引きずらないこと。

誰を選ぶか以上に、
“どんな自分で選びたいか”を大事にする。

それができる人は、
どんな出会いの形であっても、ちゃんと幸せに辿り着ける。


婚活は、迷って、悩んで、ようやく見えるものがある。
誰かを選ぶたびに、自分の中の軸が少しずつ整っていく。
その繰り返しの中で、
「選ぶことが怖くなくなったとき」――
あなたの心は、もう準備ができている。

同時進行は、迷いじゃない。 自分の本音を確かめるための時間。

焦らなくていい。
人を選ぶことは、人生を選ぶこと。
そして、あなたが迷いながらも誠実でいようとする限り、
その選択は、必ず“正しい方向”に導かれていく。