婚活市場でよく聞く言葉がある。
「年収1000万円以上の男性はモテる」。
数字のインパクトは大きい。
アプリのプロフィールでも、
“年収1000万以上”の欄にチェックが入っているだけで、
一気にマッチ数が増えるという。
でも、その一方で、
こんな声も少なくない。
「実際に会ってみたけれど、ピンとこなかった」
「条件は理想的なのに、なぜか心が動かない」
――“年収1000万”という肩書きは、
たしかに婚活では目を引く。
けれど、それだけでモテる時代は、
もう終わりを迎えているのかもしれない。
婚活で“モテる”というのは、
単に「人気がある」という意味ではない。
本当にモテる人は、
“信頼される人”のことだ。
たとえば、
会話の中で相手に安心感を与えられる人。
忙しくても、約束や連絡を丁寧に守る人。
誰かを下に見ない、余裕のある人。
そのような人が“モテる”のは、
年収とはまったく別の次元にある。
つまり、婚活でモテるのは、
「高年収」よりも「高誠実」。
そして誠実さは、
金額ではなく、生き方に滲み出るものだ。
ある女性がいた。
彼女は婚活アプリで年収1000万円以上の男性と何人か会った。
確かに彼らは仕事ができて、
話し方もスマートで、自信に満ちていた。
けれど、デートの帰り道に彼女はよく思った。
――「なんだか、心が置いてきぼりのままだな」
会話は楽しいのに、心が触れない。
プレゼントは嬉しいのに、距離が縮まらない。
彼女は気づいた。
“豊かさ”には、二種類あるのだと。
一つは、“稼ぐ力”がつくる豊かさ。
もう一つは、“分かち合う力”がつくる豊かさ。
そして、婚活で本当に求めているのは、
後者なのかもしれない、と。
婚活の世界で“年収1000万”という数字は、
一種のブランドのように扱われる。
けれど、それは「ゴール」ではなく、「条件のひとつ」。
人生の幸福度を決める要素ではない。
収入が高い人ほど、
責任も、ストレスも、孤独も背負っていることが多い。
仕事に時間を取られ、
恋愛や結婚に割ける心の余裕が少なくなる人もいる。
だからこそ、
婚活で年収1000万の男性が“モテる”かどうかは、
“数字の余裕”よりも“心の余裕”にかかっている。
人は、安心を感じた相手に惹かれる。
それは年収でも外見でもなく、
“自分を否定しない空気”の中にある。
婚活でモテる人に共通しているのは、
相手を見抜く力ではなく、相手を受け止める力だ。
「この人の前では、無理をしなくていい」
そう思わせる人は、どんな条件よりも魅力的だ。
一方で、
年収や肩書きを誇示しすぎる人は、
相手に“競争”を思い出させてしまう。
「自分はこの人に釣り合うだろうか」
「この人に合わせなきゃ」
そう感じた瞬間、心は縮こまり、
恋愛の温度が下がってしまう。
婚活では、
「モテたい」と思うより、
「安心してもらえる人になりたい」と思うほうが、
ずっと現実的で、ずっと幸せに近い。
年収1000万円という数字は、
努力や能力の象徴かもしれない。
でも、その努力を“誰かの幸せに使える人”が、
本当の意味でモテる人だ。
お金は、人を惹きつけるけれど、
心は、人を離さない。
そして、長い人生を共にするなら、
惹きつける力より、離さない力のほうがずっと大事だ。
婚活市場では、
数字が一人歩きしやすい。
けれど、数字の裏には、
必ず人間のストーリーがある。
たとえば、年収1000万円の男性が、
その数字に至るまでにどれだけの努力を積み、
どんな想いで働いてきたか。
そこに共感できるかどうかが、
“条件の相性”ではなく、“心の相性”を決める。
また、女性側にも大切な視点がある。
「年収1000万の男性と結婚したい」
その願いの奥に、
“安心して生きたい”という想いがあるのなら、
それはとても自然なことだ。
でも、その“安心”を誰かに依存する形で求めると、
相手の数字に自分の幸せを委ねることになる。
本当の安心は、
“自分も誰かを支えられる”と思えるときに生まれる。
だから、
「年収1000万の人と出会いたい」ではなく、
「お互いに支え合える関係を築きたい」と考えた瞬間、
婚活の景色は変わる。
婚活の本質は、
“条件探し”ではなく、“価値観のすり合わせ”。
数字に惹かれるのは自然なこと。
でも、数字に心を縛られてしまうと、
“本当の幸福”を見落としてしまう。
年収1000万円の人と出会うことより、
“お互いの人生を豊かにできる関係”を見つけること。
それが、本当の意味で「モテる」人の選び方だ。
年収1000万円という数字は、
一瞬の安心をくれる。
けれど、人の心を動かすのは、
「数字」ではなく「眼差し」だ。
相手の話を丁寧に聴けること。
忙しい中でも約束を守ること。
思いやりを言葉にできること。
それらが積み重なったとき、
“この人となら”という信頼が生まれる。
婚活でモテる人とは、
スペックではなく、“信頼を重ねられる人”だ。
年収1000万でも、そうでなくても、
“心の豊かさ”が伝わる人が、最終的に選ばれる。
数字は、見るための指標。
でも、愛は、感じるためのもの。
婚活において、
数字を超えた誠実さと温度こそが、
本当の「モテる力」なのだと思う。