夜勤明けの朝。
明け方までバタバタして、帰り道にふとスマホを見る。
婚活アプリの通知がいくつか来ているけれど、
正直、開く気力がない。
「婚活って、仕事より疲れるな…」
そんな独り言が、ため息と一緒にこぼれる。
看護師として、何年も人の命と向き合ってきた。
患者さんの小さな変化に気づき、
同僚のフォローに気を配り、
家族や友人にも頼られることが多い。
けれど――
“支えること”には慣れても、
“支えられること”には、どこか不器用になっている自分がいる。
婚活の現場で、看護師という職業は人気があると言われる。
「優しそう」「家庭的」「しっかりしていそう」――
そんなイメージを持たれることが多い。
でも、実際に婚活をしてみると、
その“イメージの壁”に苦しむ人も少なくない。
「看護師さんって、癒してくれそう」
「頼りがいがある人がいいな」
そんな言葉を言われるたびに、
心のどこかが少し疲れる。
本当は、癒してほしいのは私のほうなのに――。
看護師という仕事は、
日々“誰かのため”に動くことが当たり前になる。
患者さんの不安を受け止め、
同僚のフォローをし、
時には医師の苛立ちにも耐える。
その中で、
“自分の気持ち”を後回しにするのが習慣になる。
だから、婚活の場でもつい、
「相手を立てる」「相手に合わせる」「相手を支える」
そんなスタンスを取ってしまう。
でも、恋愛は“献身”ではなく“対話”。
支えすぎると、
相手はあなたの“強さ”に甘え、
あなたは自分の“弱さ”を見せられなくなる。
そして気づけば、
「いい人」で終わってしまう。
あるアラフォーの看護師女性が話してくれたことがある。
彼女は30代後半から婚活を始めた。
出会いは多いほうだったが、
なぜか関係が続かない。
「私が何か間違ってるのかな」と悩んでいたある日、
友人に言われたひと言が心に刺さった。
「あなた、いつも“頼もしい”けど、“女らしい”瞬間を見せないよね。」
最初は反発した。
でも、思い返すと、
相手が仕事で悩んでいるときも、
自分が疲れているときも、
「大丈夫だよ」「頑張ろう」と言っていた。
優しさのつもりだった。
でも、実は“甘えること”を恐れていただけだった。
アラフォーになってからの婚活は、
20代の頃のような“ときめき”よりも、
“信頼”や“安心感”が大切になる。
でもその信頼は、
“弱さを見せられる関係”の上にしか築けない。
人を支えることができるあなたには、
人に支えられる資格もある。
それを許せたとき、
婚活は少し楽になる。
婚活でよくある質問に、
「どんな男性が理想ですか?」というものがある。
多くの看護師女性はこう答える。
「穏やかで、理解のある人。」
でも本当の理想は、
“あなたが安心して素のままでいられる人”だと思う。
穏やかさも理解も、
それが“あなたの強さを奪わない優しさ”であることが大事。
看護師として築いてきた責任感は、
恋愛の中でも顔を出す。
だからこそ、
“頑張らなくていい人”と出会うことが、
幸せの第一歩なのだ。
婚活中のアラフォー看護師の多くが口にする悩みがある。
「忙しくて時間がない」
「夜勤があって予定が合わない」
「生活リズムがずれていて、出会いが続かない」
それは事実だ。
でも同時に、
“自分の時間を大切にできる人”だからこそ、
出会いの価値を深く感じることもできる。
無理に数をこなすより、
心が通じる一人と丁寧に向き合う婚活のほうが、
あなたには合っている。
婚活のスピードは、仕事の効率とは違う。
“愛”は、急げば急ぐほど遠ざかる。
看護師という仕事を続けている人の中には、
人の痛みに敏感な人が多い。
だからこそ、恋愛でも相手を思いやりすぎてしまう。
でも、ときには「助けない勇気」も必要だ。
相手の悩みや未熟さを、
あなたがすべて背負ってしまうと、
関係が“依存”に変わる。
相手が成長する余白を残すことも、
優しさのひとつだ。
あなたは“人を救う人”だけど、
恋愛では“共に生きる人”であっていい。
支える手と、支えられる手。
そのバランスが、愛を育てる。
アラフォーという年齢を重ねると、
婚活に“焦り”や“比較”がつきまとう。
でも、
あなたが歩んできた道には、
仕事で守ってきた命、
出会ってきた人の笑顔、
誰かのために流した涙がある。
それは、“条件”では測れない人生の厚み。
婚活の場で、
それを「重たい」と言う人もいるかもしれない。
でも、“その重みを美しいと思う人”が、
本当にあなたに合う人だ。
看護師という仕事は、
人の「最期」を見ることもある。
だからこそ、
“今を大切にする愛”の尊さを知っている。
その経験こそが、
アラフォー婚活の中で一番の強みになる。
「誰かと生きること」は、
“完璧な未来”を描くことではなく、
“不完全な今”を受け入れ合うこと。
仕事でも恋愛でも、
あなたが大切にしてきた“命へのまなざし”は、
必ず誰かの心を動かす。
婚活において、
“癒し系”であることよりも、
“信頼できる人”であることのほうが価値がある。
アラフォー看護師のあなたには、
その信頼を築ける力がすでにある。
あとは、それを“守るための優しさ”だけでなく、
“受け取るための勇気”に変えていくだけ。
「助けること」に慣れたあなたが、
「助けられること」を受け入れたとき、
本当の意味で愛は流れ始める。
誰かの命を支えてきたあなたは、
もう十分に強い。
だからこれからは、
“強い人”としてではなく、
“温かい人”として愛されていい。
婚活とは、
支える側から支えられる側へ、
少しずつ重心を移していく時間。
その変化を恐れずに、
あなたの“優しさの続きを生きる”こと。
それが、
アラフォー看護師という人生の、
美しい第二章のはじまりだ。