婚活をしていると、
いつの間にか“頑張る”が“必死”に変わっていることがある。
アプリを開くたびに、
「いいね」の数や既読のタイミングに心が揺れる。
デートの帰り道、
「今日の私、大丈夫だったかな」と自己採点をして、
小さな言葉の裏を何度も反芻する。
夜、ベッドの中でスマホを見つめながら、
「このまま一人だったらどうしよう」
そんな不安が、静かに胸を締めつける。
――気づけば、婚活が“日常の中心”になっている。
恋をしたいのに、恋が苦しい。
幸せを願っているのに、心が疲れていく。
そんな夜を、あなたも過ごしたことがあるだろうか。
「婚活で必死になるのは悪いことですか?」
そう聞かれたら、私はきっとこう答える。
いいえ、悪くありません。
むしろ、それだけ“人を愛する力”があるということ。
必死になるというのは、
“何かを失いたくない”という真っ直ぐな感情の証。
誰かと心を通わせたいと願うことは、
人としてとても健やかで、美しいことだ。
でも、問題は――
その“必死さ”が、いつの間にか“自分を追い詰める力”になってしまうこと。
婚活において「必死」は、最初はエネルギーだ。
けれど、それが続くと、
だんだんと“自分を疑う時間”に変わっていく。
「私、もう遅いのかな」
「この人が最後のチャンスかも」
「頑張らなきゃ、もう誰にも選ばれない」
そんな言葉が頭の中をぐるぐると回り始めたら、
それは“愛の不安”ではなく、“自己否定の焦り”になっているサイン。
焦りは、行動の原動力になることもある。
けれど、“欠けている自分を埋めるため”の焦りは、
本当の愛を遠ざけてしまう。
なぜなら、
“愛されたい”よりも先に、“怖い”が顔を出すからだ。
婚活が長くなると、
多くの人が“戦略的”になる。
「返信はすぐしないほうがいい」
「デートでは話を聞き役に徹するべき」
「初対面で結婚の話は重いと思われる」
たしかに、そういう“テクニック”はある。
でも、恋愛は戦略ではなく、呼吸のようなものだ。
相手に合わせようとすればするほど、
自分の心の温度が下がっていく。
本当は、
自然体で笑っているあなたにこそ、
惹かれる人がいるのに。
必死で“好かれる努力”をしているうちに、
“自分を好きでいられる時間”が減っていく。
ある女性の話をしよう。
彼女は30代後半、仕事も充実していて、
周囲からは「なんでもできる人」と言われていた。
でも、婚活になると急に自信がなくなる。
「私なんて…」という言葉が口癖だった。
ある日、彼女は友人に言われた。
「あなたって、“うまくいかない恋”のときほど丁寧になるよね。」
その言葉に、ハッとした。
本当に大切にすべきは、
“相手”ではなく“自分の心”だったのだ。
それから彼女は、婚活アプリを一度やめた。
代わりに、週末はカフェで読書をしたり、
友人と小旅行に出かけたりした。
「好きな自分でいられる時間」を増やしていくうちに、
不思議と心が軽くなった。
数ヶ月後、
何気なく再開したアプリで出会った男性と、
自然な会話が続くようになった。
彼女は言った。
「たぶん、“必死じゃない自分”のほうが、ちゃんと人と向き合えるんです。」
“必死”という言葉の中には、
“必ず死ぬ”という文字がある。
だからこそ、
その言葉はどこか切実で、
痛みを含んでいる。
でも、本当の婚活とは、
“生きる”ための活動だ。
結婚は、
欠けている自分を埋めるためのものではなく、
“生きる力”を分かち合うもの。
誰かに必要とされたいと思う気持ちは自然だけど、
その前に、
“自分が自分を必要としている”と感じられるかどうかが、
すべての始まりだ。
婚活で“必死”になるとき、
私たちはよく、「未来」を見すぎてしまう。
“何歳までに結婚したい”
“次のデートで決めなきゃ”
“この人がダメなら、もう終わりかも”
でも、愛は“計画”ではなく“積み重ね”。
今日のあなたの言葉、
今日のあなたの笑顔、
そのひとつひとつの積み重ねが、
いつか“未来”をつくる。
焦りを手放した瞬間、
出会いは急に“現実”になる。
なぜなら、
焦っているときは“理想”しか見えないけれど、
落ち着いているときは“人”が見えるから。
「婚活で必死になりたくない」
そう思うのは、弱さではない。
それは、“本当の幸せ”に気づき始めたサインだ。
頑張ることと、必死になることは違う。
頑張るのは、“前を向く力”。
必死になるのは、“自分を責める力”。
もし今、
あなたが「もう疲れた」と感じているなら、
それは「少し休んでいいよ」という心の合図。
休むことは、
止まることではない。
むしろ、
次の出会いに向けて心を整えるための、
大切な準備期間だ。
婚活とは、“希望”を探す旅。
けれどその希望は、
外の世界にあるのではなく、
あなたの中にある。
“必死”に誰かを求めるよりも、
“丁寧に自分を大切にする”ことのほうが、
出会いを引き寄せる。
焦りを手放したとき、
愛はゆっくりと近づいてくる。
必死にならなくても、
あなたには、ちゃんと価値がある。
必死にならないほうが、
あなたの温かさは伝わる。
恋愛は、がむしゃらに掴むものではなく、
“心の余白”にそっと入ってくるものだから。
どうか、焦らないで。
あなたが一生懸命に生きてきた時間は、
それだけで十分に“魅力”なんだ。
婚活で必死になってしまうのは、
それだけ真面目で、
それだけ愛を信じている証。
だからこそ、
少しだけ肩の力を抜いてみよう。
愛されるためではなく、
誰かと笑い合うために――。
あなたの“必死さ”の中にある、
真っ直ぐな優しさが、
きっと誰かの心を動かす日が来る。