婚活市場では、公務員という肩書きがいつも人気の上位にある。
安定した収入、堅実な生活、誠実そうな印象。プロフィールに「地方公務員」とあるだけで、マッチングアプリの返信率が上がる、という話も珍しくない。
けれど、冷静に考えてみてほしい。本当に「公務員だからモテる」のだろうか。
そして、「公務員と結婚すれば幸せになれる」と、心のどこかで信じてしまうのはなぜだろう。
婚活の現場では、理想の条件を持つ人ほど、早くに埋まっていくように見える。だが実際にその「理想」を手にした人が、必ずしも幸福そうではないのも、また事実である。
「安定」は確かに魅力的だ。だがその安定に惹かれすぎると、心のどこかが少しずつ鈍くなっていく。
それは、恋愛における“安心”と“ときめき”のバランスを、静かに狂わせていくからだ。
「婚活 公務員 モテる」という検索ワードの裏には、ひとつの共通した欲が潜んでいる。
——“安心したい”という願いだ。
変化の多い時代、将来が読めない時代。だからこそ「安定した人と結婚したい」と願うのは、まったく自然な感情である。
だが、その「安心したい」という願いが強すぎるとき、私たちは恋愛を「条件付きの逃避」にしてしまうことがある。
つまり、「愛する」よりも「不安を消す」ための相手を探してしまうのだ。
そうして出会った“安定の象徴”のような男性が、公務員であることも多い。
しかし、実際に会ってみると、想像していた「優しくて堅実な理想像」とは少し違うこともある。
会話が淡々としていて、情熱を感じない。
あるいは、自分の話ばかりで、相手への興味が薄い。
そうした違和感を感じても、「でも安定してるし」「悪い人じゃないし」と、自分の心をごまかしてしまう。
けれど、恋愛において「悪くない人」を選ぶというのは、もっとも危うい選択肢なのかもしれない。
そもそも、“モテる公務員”とはどんな人なのだろう。
実際のところ、肩書きだけではなく、“人としての安定感”を持つ人が、モテるのだと思う。
安定感とは、感情の起伏が穏やかで、相手を受け止める余裕があるということ。
つまり、彼が公務員だからモテるのではなく、「安定して見える生き方」を体現しているから、惹かれるのだ。
逆に言えば、同じ公務員でも、心が閉じていたり、他人に興味を持てない人は、モテない。
肩書きの安定と、心の安定は別物である。
むしろ、肩書きがしっかりしている人ほど、自分の感情に鈍くなっていたり、恋愛を合理的に処理しようとする傾向もある。
婚活においては、職業よりも、「感情に向き合う力」を持つ人こそが、本当の意味で安定している人なのだ。
婚活をしていると、どうしても「条件」で人を見てしまう。
それは、傷つかないための防衛でもある。
だが、条件で人を見るということは、同時に「自分も条件で見られる」という世界に身を置くということでもある。
だから、相手の安定を求めすぎるほど、自分も「安心される女」でいなければならなくなる。
優しくて、落ち着いていて、波風を立てない——そんな“無難な自分”を演じるうちに、いつのまにか「恋する自分」を忘れてしまう。
だが、人は本来、安定だけでは生きられない。
恋愛とは、心が少し不安定になることを引き受ける勇気でもある。
だから、安定を求めすぎると、逆に不安が増えていく。
「この人と結婚して、本当に心が安らぐだろうか」
「この安定の中で、私は自分らしく呼吸できるだろうか」
そうした問いが、静かに胸の奥から立ち上がってくる。
結局、「婚活 公務員 モテる」という言葉は、社会が抱える“安心への飢え”を映す鏡のようなものだ。
経済的にも、社会的にも、安定を手に入れにくい時代。だからこそ、公務員という職業が象徴的に輝いて見える。
しかし、それは「個人の魅力」というより、「社会が与えた幻想」である。
幻想を追いかけるほど、現実の人間関係は平板になっていく。
相手を肩書きで選ぶとき、私たちは同時に、自分の心の奥にある“本当の安心”から遠ざかっているのかもしれない。
“本当の安心”とは、条件の中にではなく、関係の中に育つものだ。
「この人と一緒なら、不完全でも生きていける」
そう思える瞬間こそ、愛の始まりである。
公務員かどうかは、たしかにひとつの判断材料にはなる。
しかし、そこに留まってしまうと、人生の本質を見失う。
安定とは、「職業が安定していること」ではなく、「心が安定している関係」を築けることだからだ。
ある女性が言っていた。
「公務員の彼と結婚して、最初は安心したけど、だんだん息苦しくなっていった」と。
彼はまじめで誠実だったが、常に規律を重んじ、感情の起伏を嫌った。
「安定していること」と「感情を抑えること」を混同していたのだ。
その結果、彼女は次第に自分を閉じていった。
——けれど、ある日ふと思ったという。
「この安定の中で、私は安心していない」と。
そう気づいたとき、初めて“安定とは何か”を考え始めたと彼女は語った。
彼女が本当に求めていたのは、“何があっても心を通わせられる関係”だったのだ。
それは、肩書きでは測れない、もっと静かで確かな信頼のかたちである。
婚活における「モテる人」とは、安定した肩書きを持つ人ではなく、相手の心を安心させる人だ。
そして、「選ばれる人」とは、条件に依存せず、相手の人間性を見抜ける人である。
安定した未来を手にしたいなら、まず自分の内側を安定させること。
焦りや不安のままに選んだ相手は、結局その不安を映し返す存在になる。
逆に、心が穏やかで、自分を信じている人のもとには、同じように穏やかで信頼できる人が引き寄せられてくる。
“婚活 公務員 モテる”という言葉に心が動いたときこそ、問い直してみてほしい。
——私は、安定を求めているのか。
それとも、愛を求めているのか。
安定は、愛の結果であって、条件ではない。
そこに気づいた瞬間、婚活の景色はまったく違うものに見えてくるはずである。